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「フィルテック™シュープリームフローコンポジットレジン」の特性を活かした審美治療

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「フィルテック™シュープリームフローコンポジットレジン」の特性を活かした審美治療

『日本歯科評論』通刊第778号掲載

はじめに

ナノテクノロジーはフロアブルレジン どのような進化をもたらしたか

「フィルテック™シュープリームフローコンポジットレジン」(3M ESPE、図A)の最大の特徴は、従来のフロアブルレジンと比較して格段の審美性と強度を有している点であろう。その背景には、同社よりすでに販売され、その審美性で高い評価を受けている「フィルテック™シュープリームコンポジットレジン」にも用いられているナノフィラー技術がある。

これは、直径5~10nm(ナノメーター:1 ミクロンの1/1000)のジルコニア・ナノフィラー粒子と直径75nm のシリカ・ナノフィラー、 さらにこの2種の粒子を結合させ たナノクラスター(塊)とを組み合わせることでフィラー充填率を高めるものである。この技術によって、審美面において滑沢性では従来の1.4倍、光沢の持続性は5.5倍、強度面では耐摩耗性が2割向上した。

本稿では、その特徴が活かされる適応症と、より審美的な修復のためのテクニックについて、臨床例とともに紹介する(図B・図C、症例1〜症例7)。

症例1 ※タップすると写真を表示します

症例2 ※タップすると写真を表示します

症例3 ※タップすると写真を表示します

症例4 ※タップすると写真を表示します

症例5 ※タップすると写真を表示します

症例6 ※タップすると写真を表示します

症例7 ※タップすると写真を表示します

審美性と強度を併せ持つフロアブルレジンの適応症

高い審美性を持つフロアブルレジンであれば、第一の適応は楔状欠損であろう。その理由として、従来フロアブルレジンはフレキシビリティが高く、歯頸部のように応力がかかる部位に有効である点が挙げられる。スマイル時に前歯部だけでなく上・下顎の第一・第二小臼歯の歯頸部まで見える人が多いが、そのような患者さんで審美面の要求が高い場合でも、十分対応できる。

その他にも、エナメル質の剥離や変色した部分のコーティング、V級窩洞や臼歯部の咬合圧のかからない小さめの窩洞、MI治療全般などが挙げられる。

審美面でも築盛でも有益なレイヤリングテクニック

筆者は楔状欠損の治療を行う際、ほとんどの場合レイヤリングテクニック(積層充填法)を用いている。これは、ベースに通常のシェード、表層にやや明るめのシェードを用いることで色に深みがでてより自然に見えること、そして、フロアブルレジンの場合は表面張力を利用して築盛するので、充填部の表面がより平滑であるほうが成形しやすいことが主な理由である。また、ジメタクリレートポリマーの導入により、歯質に適合しやすいながらも垂れにくいという操作性の高さもその理由である。図Bは90°に立てかけてあるアクリル板に最深部で2mm、直径5mmの穴をあけ、そこにフィルテック™シュープリームフローコンポジットレジンを築盛し3分間放置したものである。平面部にも同様にする。その結果、平面部に築盛したほうがより自然な歯頸部からの立ち上がりを成形できていることがわかる。つまり、楔状欠損、V級窩洞ともに、あらかじめ下地を平面にしていたほうが成形しやすいのである(図C)。

より天然歯に近い色調を得るために

ー12色のシェードとカメレオン効果ー

フィルテック™シュープリームフローコンポジットレジンは従来のフロアブルレジンより透明度が高いため(図A)、下地の色を反映する。すなわち、歯冠側の歯質とのマージン部を薄くオーバーラップさせることによりカメレオン効果が得られ、歯質とレジンの境界がほとんどわからなくなるのである。また、主に使用するのはAシェードであるが、表層にBやC、Dシェードを用いることでその歯のキャラクターを表現することができる。

まとめ

フロアブルレジンは、通常のコンポジットレジンと比べて審美面や強度でまだ同等のレベルにはないものの、その操作性や使い勝手の良さにより、現在筆者のコンポジットレジン修復臨床における使用場面は確実に増えている。審美性とある程度の強度を得たことで、その適応範囲が今後ますます広がることを期待したいものである。

<参考文献>

1)友田篤臣:低粘度レジンに関する研究、愛知大歯誌、38(1):19-36,2000.

2)日野浦 光:フロアブルコンポジットレジン、歯界展望、Vol.93(5):1011-1015,1999.

3)趙永哲ほか:低粘度レジンが窩底部の接着に及ぼす影響、接着歯学、Vol.21(4):320-321,2003.

4)3Mヘルスケア:フィルテックシュープリームフローコンポジットレジン技術資料、No.23,2007.