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シリコーン印象材を考える

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シリコーン印象材を考える

『歯界展望』Vol.118 No.6掲載

臨床で見るインプリント™3の利点

はじめに

今日、臨床において精度の高い印象採得を行うには、親水性ビニルシリコーンゴム印象材が最も適していると思われる。もちろん、ほかにも高い精度を得る印象材料は存在するが、親水性ビニルシリコーンは特に術者の手技の影響を受けにくく、安定した結果を得ることができる。

今回、3M ESPE社のインプリント™3 印象材を用い、実際に臨床上での優れた点を検証する。

前歯部における修復

前歯部における審美歯科修復においては唇側のマージンを歯肉縁下に設定することは必然であるが、補綴物との適合を良くするため精度の高い印象採得が必要となる一方で、過剰な歯肉圧排は早期の歯肉退縮を招くことにもなる(1)。

筆者は印象時、通常ダブルコード・テクニックを採用しているが、歯肉のダメージを最小に抑えるため一次圧排糸は4-0の黒色絹糸、二次圧排糸は#000 を用い、圧排深度は歯肉溝内にとどめる(2)。

当然、湿潤した狭い歯肉溝内の印象は印象材の舐められやちぎれの原因になるが、今回使用したインプリント™3ウォッシュマテリアルのライトボディは歯肉溝内までしっかり流れ、ちぎれがないため、歯肉縁下の印象を全周にわたって明確に採ることが可能であった。

症例はジルコニア・オールセラミックスによる上顎左右中切歯の修復である。ジルコニア・フレームの適合を考慮した支台歯形成を施し(図1)、圧排後、ウォッシュマテリアルのライトボディで支台歯の印象採得を行う。その際、強い圧をかけて印象材を歯肉溝内に注入すると一次圧排糸が浮いてしまうため、弱い圧でマージンをなぞるように行う。

ライトボディはフローが高いため、十分に歯肉溝内まで流れ込む。また、適度なチキソトロピー性があるため、垂れて流れてしまうことはない(図2).

トレーマテリアルはポジション™ペンタ™印象材を用いた。トレー撤去後、印象面を確認すると狭い歯肉溝から一次圧排糸まで印象材が達し、ちぎれがないことが確認できる(図3)。

石膏模型においてはマージンラインの直下の湿潤している一次圧排糸の編目まで再現されていることがわかる。また、シャープであるエナメルマージンも舐められることなく、狭い歯肉溝も明瞭に見て取れる(図4)。以上のことからインプリント™3は印象時だけでなく、石膏注入の際にも高い親水性を発揮することがわかった。

本症例ではジルコニア・オールセラミックスによる補綴物を装着したが(Lava™、3M ESPE社使用)、適合性の高いマージンにより、天然歯と変わらぬ自然な辺縁歯肉が得られた(図5)。

インプラント上部構造の印象採得

インプラント治療における上部構造の印象採得は、インプラントと隣在歯の正確な位置の再現が特に重要である一方、審美的観点から粘膜面の再現性も求められる。

症例は5の欠損部におけるインプラント治療で(図6)、

印象採得はオープントレーテクニックで行った。ウォッシュマテリアルのウルトラレギュラーボディ(日本未発売)は粘膜面と印象用コーピングを包み込みながらも垂れない粘度を保つ(図7)。

トレーマテリアルにはヘビーボディを用いたが、硬化後の精度を維持するため強固となるのでアンダーカット部のブロックアウトは必要である。印象面を確認すると粘膜面と印象用コーピングはレギュラーボディ、隣在歯を含むそれ以外はヘビーボディで印象され、ともになじみもよい(図8)。

インプラント上部の補綴物はジルコニア・オール セラミックス(Lava™DVS、3M ESPE社)を用いた(図9)。

コンタクト調整や咬合調整はほとんどなく、トレーマテリアルの固さによること、ウォッシュマテリアルの永久ひずみが少ないことにより高い精度が得られ、インプラントと隣在歯の位置が正確に再現されていることが確認できた。

おわりに

今回トレーマテリアルとして使用したポジション™ペンタ™ならびにインプリント™3ペンタ™へビーボディは専用のペンタミックス™3 印象材自動練和器を用いることによりガンタイプと比べて力もいらず、容易にトレーに盛ることができ、印象時の効率が格段に向上した(図10)。

また、ウォッシュマテリアルのシリンジとして使用したイントラオーラルシリンジは、従来と違って印象材のベースとキャタリストを別々に注入し(図11)、

印象採得時にミキシングする仕組みとなっているため、硬化時間にゆとりがもてた。また、先端が細長くなっていることで、歯肉縁下マージンや狭窄部位に届き、確実に印象材を流し込むことで気泡の迷入や厚みの不均等を防ぐことにより、より正確な印象採得が可能である(図12)。

<文献>

1) Günay H, Seeger A, Tschernitschek H, Geurtsen W. Placement of the preparation line and periodontal health- a prospective 2-year clinical study. Int J Periodontics Restorative Dent. 2000 ; 20(2): 171-181.

2) 高橋純一. オールセラミックの「審美性」を引き出すための基本. 日本歯科評論. 2008 ; (783) : 71-76.