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感染予防を配慮した簡単で確実なコンポジットレジン修復

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感染予防を配慮した簡単で確実なコンポジットレジン修復

『デンタルダイヤモンド』Vol.30 No.420 掲載

臨床範囲を広げた近年のコンポジットレジン修復

材料やボンディング材の性能向上により、従来の使用法のみならず、患者のニーズも手伝ってMIや審美治療としての用途が増えると推測できるため、今後、日常臨床におけるコンポジットレジン修復の占める割合はますます増えると思われる。しかしながら、手順が複雑なために一つ間違えると早期に脱落したり、シェードが合わない場合のやり直しなどで治療時間がかかるという問題もある。また、治療の性格から感染予防対策も複雑に考えがちである。

本稿ではできるだけコンポジットレジン修復の手順の簡素化を図るとともに、手軽にできる感染予防を提案する。

Standard precaution (Universal precaution) とは

米国疾病予防管理センター(CDC)が示す標準予防策をいう。すべての血液・体液には感染性があるものとして対処する考え方に基づき、医療行為を行う場合に常に行うべき感染予防対策である。歯科領域においては、HIV/AIDS(後天性免 疫不全症候群)、HBV(B型肝炎)、HCV(C型肝炎)が代表的なものであるが、感染者が受診の際に自己申告をすることはほとんどないといっても過言ではない。疾患が潜在的なものなので当人が気づいていないか、偏見による受診拒否を恐れ、申告を躊躇するからである。一般臨床医においてスタンダードプリコーションが必要となるのはそのためである。

意識改革による院内感染予防

感染予防において、感染症患者対応病院レベルの完璧さを一般臨床医に求めるには費用と時間の点から現実的ではない。必要なのは院長をはじめ、スタッフが「感染症」を理解し、意識を変えるだけで感染予防対策が十分向上できることを認識することである。院内感染を防ぐには、まずは器具、材料、ユニットなどを汚染させないことが重要である。治療を施す際、術者の手指は清潔という考えがあっても、患者の唾液や血液に触れた場合、術者の手指は汚染されることとなり、その発想は逆転する。そこで術者の触れる範囲を限定することにより汚染領域を特定し、消毒部分や方法を明確にすることができるのである。

実際、術者が触れた器具や材料をすべてアルコールなどの薬品で消毒するのは、非常に手間がかかるものである。そのため、患者の唾液や血液に触れた手指で不用意にあちこちを触らないようにしなければならない。ユニットまわりにおける清掃はできるだけ短時間で、コストをかけないで行いたいものである。患者ごとにシートの部分を拭く(治療中発汗した患者の汗を拭き取るのが目的。とくに血液等で汚染されていなければ水拭きでもよいと思われる)。シンクは水洗し、水滴を拭く(使用した紙エプロンを利用)。たとえば当院での基本のディスポーザブルは紙コップ、紙エプロン、滅菌シート、シリンジスリーブの4点である。術者側のデンタルライトおよびユニットテーブルのグリップ、スイッチ類はアルコールでよく拭き、外科処置の場合はラッピングをする(図1)。

また、スタッフにはCDCによるガイドラインに基づく手洗い法(よく水洗したのち逆性石鹸を使い、もう一度水洗、ペーパータオルにて水気を拭き取った後、速乾性のアルコールにて消毒する)を徹底させる(図2)。

器具、材料の準備

基本セットは滅菌シートに梱包し、テープを貼る。滅菌済の文字が患者にアピールできるようになっている(この方法は畠山善行先生よりご教示いただいた)。また、使用する照射器については後に詳しく触れるが、当医院では3M ESPE社のエリパーフリーライト2を使用している。コンパクトでコードレスなため、先端だけでなく本体もすっぽりシリンジスリーブで覆うことができ、感染予防に適している。先端は滅菌できるが、患者ごとに滅菌するのは手間がかかるため、先端をラッピングしている(図3)。

基本セットは各医院でよく使用するものでよいと思うが、当院ではピンセットは種類の違う2本 を入れ、患者の口腔内用と、材料や薬品等の取り扱い用に分けている。この2本目のピンセットが汚染防止に有効であり、たとえばワッテを取るときピンセットの後ろを使ってワッテ缶のふたの開閉をしたり、バーのたぐいもピンセットで取ることによりワッテ缶やバースタンドに直接触れずにすむ(図4、5)。

また、あらかじめ使用することがわかっている器具や材料については前もってアシスタントに用意してもらい、術者が直接手に触れるものは滅菌シートの上に置く(図6)。

簡単で確実なコンポジットレジン修復

コンポジットレジン修復を行ううえで必要なのは、一つひとつの手順を確実にかつ手早く行うことである。まず使用するコンポジットレジンのシェードを決めるためにシェードマッチングを行う。重合すると透明感が増すことや、積層法を用いる場合の各色のマッチングを見るため、カスタムメ イドのシェードガイドの作製をお勧めしたい。

当院ではデンチン、ボディ、エナメルの各色が揃っていて、積層法に適している3M ESPE社製のシュープリームを使用している。

作製法はいたって簡単で、各コンポジットレジンをシリンジから1mmくらい出して輪切りにし、2種のレジンを半分位で交わるようにしてから楕円に整形し、重合した後研磨する。デンチン、ボディ、エナメルの順に積層する。通常は2種の積層が多いため、デンチン・ボディ、ボディ・エナメル、デンチン・エナメルのガイドを作れば十分であると思われる(図7)。

チェアーサイドには使用するコンポジットレジンとボンディング材、充塩器、紙練板と遮光板のみを用意し、いたってシンプルにまとめるようにする(図8)。

積層法のすすめ

コンポジットレジン修復のテクニックにおいて、積層法は外せないものになりつつある。デンチン色、ボディ色、エナメル色を順に築盛していくが、一見、複雑に見えるこの手技も慣れてしまえばさほどでもない。

積層することで、充填したコンポジットレジンは歯質に近似した深みのある色が出せるため、確実に患者の満足度を高めることができる(図9~12)。

プレパレーション

現在ではほとんど(抵抗形態の付与などの)制約はないといってもよいと思われる。ただし、エナメル質とレジンの境界線を目立たなくするために、マージンには前歯部では内側に、臼歯部では外側にベベルを付与している(図13)。

エッチング/ボンディング

手技の簡素化や時間の節約から、現在では1液性が主流になりつつある。しかし、ボトルタイプだと開封したらある期間内に使い切らないと品質が落ちるという欠陥がある。そこで、当院では、感染予防と安定した物性の観点から3M ESPE社製のアドパープロンプトL-Popを使用している。

アドパープロンプトL-Popは、他にはないユニークなデリバリーシステムにより、使用直前に液を混合するため、常に新鮮である。今までは、ボンディング材塗布のために、受け皿へのボンディング材の滴下やマイクロチップが必要であり、使用後は受け皿を消毒し、収納していた。しかし、 アドパープロンプトL-Popは、使用前の受け皿準備などの必要もなく、ディスポーザブルのため、 医療従事者、患者にとってはもっとも感染予防の点で使用しやすい製品といえる(図14)。

また、1本で患者1人使い切りなので相互感染からの安全性を患者にアピールできる。性能の点では、歯質脱灰とアドヒーシブ浸透が同時に進行するため、歯質との良好な接着が得られ、信頼できる接着性能を有している(図15)。

コンポジットレジンの築盛

患者の口腔内で使用した充填器でコンポジットレジンを直接シリンジから取るのは、望ましくない。たとえアルコールで充填器を拭いても、唾液やアルコールに触れた部分のコンポジットレジンは汚染されたり、変性したりして未重合や質の低下を招く。したがって、前もって使う種類を決めておき、使う量だけ取り出し遮光板で覆い、使用する(図16)。

また、充填器についた余分なコンポジットレジンは乾いたガーゼで拭き取る(図17)。

コンポジットレジンの重合

光照射器は従来のハロゲンランプからLEDに取って代わられるであろう。事実、各社ともボンデイング材、コンポジットレジンの重合開始剤をLEDの光での反応に適しているカンファーキノンにシフトしつつある。当院でも3M ESPE社のLED照射器エリパーフリーライト2を使用している。理由は先に述べた感染予防対策に適している点の他、LEDの利点である高出力のため、ボンディング材やコンポジットレジンの硬化時間を2分の1に短縮でき、かつ発熱が非常に少ないので歯質の深部に光を到達させられること、また高出力光重合に起こりやすい急激な重合によるレジンの重合収縮を避けるため、ステップモード(徐々にパワーが上昇、5秒後に最大となる)を持ち合わせている点である(図18・19)。

より安全で簡単に、スピーディに

当院では小臼歯のI級窩洞はメタルインレーからコンポジットレジンに取って代わられた。治療時間も以前より短くてすみ、仕上げも綺麗なので患者さんに好印象を与えられる(図20~22)。

まとめ

われわれ一般臨床医は、感染予防のために必要以上のコストや時間をかけられるものではない。そのためにはほんの小さなことでもよいので、意識改革を行い、まずはその医院でできることから少しずつ始め、スタッフとともにシステムを作っていくことが大切と思われる。また、一見複雑に思える積層法を用いたコンポジットレジン修復も、使用する材料や器具を選ぶことにより手技を簡素化し、より簡単で確実な治療をもって患者の満足を得られれば、自院のアピールにつながるものと思われる。