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オールセラミックの「審美性」を引き出すための基本

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オールセラミックの「審美性」を引き出すための基本

『日本歯科評論』Vol.68(1) 通刊783号掲載

はじめに

1.オールセラミックの発展

近年におけるオールセラミック修復物の急激な発展は、CAD/CAMの発展によるものと言っても過言ではない。それまでポーセレン・ジャケットクラウンにはどうしても脆弱なイメージが付きまとい、筆者も破折やクラック等で苦い思いをした経験がある。

しかし、ノーベルバイオケア社による、フレームの強度が約700MPaを有する酸化アルミナを使用したCAD/CAM「プロセラシステム」が出現して、オールセラミックは一変した。 筆者の臨床上のパートナーである歯科技工士の吉田亨氏が日本でもいち早くこのシステムを導入したこともあり、筆者が本格的にオールセラミックに取り組んだのもこの頃からである。

現在、当院におけるオールセラミックは、約1280MPaの強度を有し、ブリッジにも適応できるジルコニアフレーム中心にシフトしつつある。しかし、酸化アルミナのほうがフレームの透過性が高いため審美面では優位な点もあり、筆者はケースによって使い分けている。

2.なぜオールセラミックが必要か

──── 審美的要求の向上

適合性や強度、操作性の面から見ると、従来のメタルボンドで十分であろう。しかし、メタルは光透過性がないため、どうしても歯肉マージン部に陰影ができてしまうのが審美上最大の欠点であった(図1・図2)。

筆者はポーセレンマージンで対応していたが、陰影を完全に消し去るものではなかった。その点、オールセラミックは光透過性があるため、歯頸部に陰影ができない。また、ファイバーポストとの組み合わせで、より生活歯に近い明度と透過性が得られる(図3・図4)。

3.オールセラミック修復の審美性を高めるポイント

──── 歯科医師の役割とは

今日では、審美性の高い補綴物=オールセラミックと言っても過言ではない。そして、オールセラミックに限らず審美補綴全般に言えることであるが、治療結果が歯科技工士の技術によって左右されることは言うまでもない。歯科医師がイメージする補綴物の方向に彼らを導き、持てる技術を最大限に発揮できるようにするのも歯科医師の役割である。

そこで今回は、オールセラミック修復の審美性を引き出すための基本となる「コミュニケーション」「支台歯形成」「軟組織のコントロール」について提言させていただく。

Ⅰ. コミュニケーションについて

──── 補綴物のイメージを共有する

テクニック以前に患者・歯科医師・歯科技工士間のコミュニケーションは最も重要なことであり、これをおろそかにして理想の補綴物を作製することはできない(図5)。

患者は自身の口元について、ある程度の理想のイメージを持っているが、言葉だけではうまくわれわれに伝わらないことが多い。そこで患者が描いているイメージを具現化するために、

(1)診断用ワックスアップ、(2)モックアップ、(3)プロビジョナルレストレーションを用いる。通常は、プロビジョナルを装着してから患者のイメージを汲み取って形態修正していく方法をとるが、多数歯症例や要求の高い患者においては、事前に(1)や(2)を組み合わせる。この手順によって“患者の持つイメージ”を歯科医師・歯科技工士が共有することができる(図6〜図8)。

Ⅱ. 理想的な支台歯を形成するために

──── トップダウンと技術向上のトレーニング

支台歯形成においても、最終補綴の形態を考慮した上で行うトップダウンテクニックが望ましい。筆者も初期の頃、教科書どおりの形成を行ったものの、クリアランス不足による形態や色の制約ができてしまい、やむなく再形成・再印象をした覚えがある。補綴物の形態が十分にイメージできていないがゆえの失敗であった。

慣れないうちは、プロビジョナルレストレーションを作製する際、技工士に補綴物を作製する上で理想的とする支台歯形態を模型上で形成してもらい(ポストを同時作製する場合は、理想形態を作ってもらう)、その上で自らも模型上で形成を行う。

もちろん実際には、支台歯が生活歯である場合などは形成の制約もあるが、支台歯形態のイメージを具現化した上でプレパレーションを行うことにより、理想に近づける。オールセラミックのフレームは、支台歯をスキャニングしてPC上でフレームをデザインし作製するが、削り出し後のフレームはメタルよりやや厚く形態修正が難しいため、支台歯の形態が補綴物に与える影響は大きいのである(図9~図12)。

Ⅲ. 軟組織のコントロール

──── マージン部の辺縁歯肉がより自然であるために

前歯部審美補綴においてはマージンを歯肉縁下に設定するため、補綴物の辺縁歯肉コントロールは重要であると共に、最も難しい部分でもある。特にオールセラミックはマージン部の辺縁歯肉の美しさが最大の利点であるため、不適切な処置により、歯肉辺縁の慢性的な発赤や早期退縮によるマージン部の露出を引き起こしてしまえば、オールセラミックを用いた意味がない。そうなってしまういくつかの原因はあるが(3)、特に形成・印象時に歯肉に与えるダメージは深刻である。

IV. 歯肉縁下マージンの設定位置の目安

──── 形成限界=歯肉溝一(0.2+0.3)mm

誌面が限られているため、今回は、特に若い先生方が悩まれるであろう「どの位の深さにマージンを設定すべきか?」について、私見も含めて一つの目安を述べさせていただく(図13~図23)。

これには多くの考え方が存在するが、筆者としては常に生物学的幅径を考慮し、歯肉溝直下の付着を侵さないよう心がけることが重要であると考える。また、設定したマージン下には最低0.5mmのスペースが必要である。その根拠として、歯肉溝底を保護する目的で一次圧排糸(プライマリーコード:4-0黒色絹糸・直径0.2mm)を挿入した上で形成・二次圧排・印象を行うこと、そして、的確な補綴物のカントゥアーおよび適合を実現させるために技工上必要なマージン下のスペースが0.3mmだからである。

すなわち、歯肉溝が1.0mmの場合、マージン設定は歯肉縁下0.5mmとなる.筆者は歯肉溝が1.0mm以上ある場合でも、通常は縁下0.5~0.7mm程度のマージン設定で十分と考える。なぜならば、深く設定するほど形成や印象、およびセメント除去が難しくなる上、補綴物が歯肉に与える影響も大きくなり、逆に歯肉の慢性的な炎症や早期退縮を引き起こす可能性があるためである。

もちろん臨床上ではコンマ何mmという数字は不確実であるが、盲目的に行うのと、ある程度イメージして行うのとでは大きな差がある。

まとめ

──── 結果をフィードバックし、歯科技工士と共に成長する

今日、患者の審美的要求は確実に高まっている。CAD/CAMによるオールセラミックは、時代のニーズとテクノロジーが生み出した現時点における理想の審美修復物と言えよう。はじめから完璧にこなすことは難しいが、結果を評価し(もし歯科技工士が結果を把握しないで仕事を続けた場合、上達はあり得ないし、モチベーションも下がるであろう)、足りない部分を一つ一つ見直して、歯科技工士と共に成長していくことが理想と思われる。

今回紹介したすべての補綴物を手がけ、作図の手伝いをしてくれた「ブレスデンタルラボラトリー」の吉田亨氏に感謝をしつつ、この稿を終わらせていただきたいと思う。